『内なる治癒力:こころと免疫をめぐる新しい医学』スティーヴン・ロック他著より

人の免疫系は四六時中、昼夜を問わず厳戒態勢にある。食細胞、T細胞、NK細胞は血流に乗ってからだのすみずみまでパトロールを行っている。その他の免疫細胞、たとえばB細胞はリンパ節のまわりにたむろし、作戦基地から出動する。健康体においては、免疫系のあらゆる部分が無敵の力を発揮してその防御にあたっている。

体内では絶え間ない小ドラマが日々繰り返されている。たとえば、パトロール中のマクロファージが細菌に遭遇した場面を想定してみよう。マクロファージが正常に働くとすると、その侵入者から抗原分子を奪い取り、それを運搬してヘルパーT細胞に手渡す。ヘルパーT細胞はその分子信号を受け取り「敵」の目印を認知するのである。

その後直ちにヘルパーT細胞はキラーT細胞に化学信号を送り、キラーT細胞群がその細菌をとりかこむ。同時に、一番近いリンパ節付近に存在しているB細胞も、敵が侵入したことを知らせる化学信号を受け取る。ヘルパーT細胞は、活性化されたB細胞に刺激を与えて、この細菌のみに有効な抗体を産生させ、血中に放出させる。

ひとたび抗体が細菌に到達するとそれらをつつみ、ちょうど血のにおいがサメを引き寄せるように、これが食細胞群を引き寄せるのである。まもなくキラーT細胞と食細胞は、侵入者とのすさまじい戦いをくり広げることになる。この戦いの勝敗いかんで、健康が左右されるわけである。

健全なからだでは通常、免疫細胞が勝利する。ひとたびからだの免疫系の勝利が決定的になると、もう一つのT細胞、すなわちサプレッサーT細胞が活動体制に入る。そして、攻撃中止の化学信号を出す。その後、食細胞が戦場に残された破片を片づけることになる。T細胞とB細胞は再びパトロール任務へと戻ってゆく。ただし、戦闘の前と大きく違う点は、それらがこの侵入者を記憶している新世代のT細胞、B細胞の集団へと変化しているということである。

これらの細胞は「記憶細胞」と呼ばれ、敵と遭遇しそれを負かす過程のなかで形成され、同じ敵が再び現れたときには、それを認識することができる。したがってその際には、敵を苦もなく撃破することができるのである。

うつ状態の人の副腎は明らかに生体の調節能力を喪失し、異常なほど多量のコルチコステロイドを分泌している。うつ状態では、視床下部、下垂体と副腎に異常が認められる。したがって、コルチコステロイドを調節する神経内分泌系の異常または欠陥の結果として、うつ状態の人の免疫機能は文字通り“落ち込む”ようだ。

自己免疫疾患にかかりやすい人の性格は、「内気でおとなしく、依存しやすく、まじめで、感情(とくに怒り)を抑圧し、従順で、自分を犠牲にし、安請け合いをし、他人からの批判に敏感で、人付き合いが悪く、極端に活動的で忙しく、頑固で、冷たいところがあり、支配欲の強い人物」である。また関節リウマチ患者の多くは、若い頃には優秀なスポーツ選手だったりスポーツ愛好家だったりした。

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