【 ゲーム脳の恐怖 】 森昭雄著
1983年、ファミコン誕生。ちょうどその頃、私はシャープのパソコンテレビでテープデッキから立ち上げたロールプレイングゲームを夜な夜な楽しんでいたのを懐かしく思い出します。それ以前にも、射撃やテニスあるいはブロック崩しのテレビゲームをやっていた記憶はありますが、本当に容量も小さく、ちゃちな内容だったと思います。
今やファミコン全盛期、ゲームのリアルな画像、迫力ある音声、素早い主人公の動き、まさにバーチャルリアルな世界といえるでしょう!プレイステーション2にゲームキューブそれにゲームボーイアドバンスまで、いつのまにやらわが家にもあふれているのでした。
時間があればゲームに興じる子どもたちの指の動きには、たまにやる親はついていくことなど敵わず、それのみかジグソーパズルなどパターンや図形認識の必要なゲームでもおいてけぼりをくう悲しき日々、もしかしてファミコンって使い用によってはもの凄い教育の武器になるのではないか、集中力を養うのにもってこいなのではないか、などと思っていました。本当に!皆さんはいかがですか?
ところが、これは大きな間違いであることが、森昭雄先生著「ゲーム脳の恐怖」を読んでわかりました。
森先生は、ゲーム中の脳波を測定することにより、脳のある部分の脳波が痴呆患者のそれと同じになる、つまり若年性痴呆状態を加速する可能性が高くなるのではないか、と恐るべき警告を出されました。
その脳の部分とは“前頭前野”、ここは人間らしさを表現する場所、理性・道徳心・羞恥心・状況判断を司っています。すなわち前頭前野の機能が低下すると、判断力などがなくなり、状況や周囲に配慮しない行動、自分勝手な態度や非常識な言葉づかい、暴力的行為などを起こしてしまいます。また、無気力になることもわかっています。
それではどうしてファミコンが悪い影響を及ぼすのでしょうか?
目からの情報は視床という感覚中継核を経由し、後頭部に位置している視覚野に入ります。そこで色や形状と同時に距離を検出し、最終的に運動出力細胞をもっている運動野へ伝わります。伝えられた情報は延髄の錐体交叉で反対側の脊髄を下行し、目的としている手足の筋肉を素早く収縮させます。この一連の流れでは、前頭前野には信号が伝わりません!頻繁に入ってくる視覚情報によって、前頭葉を使わずに、つまりゲームの操作をするときにいちいち考えずに、どんどん手が動いて、後頭部中心の神経回路が強固になっていき、前頭前野の脳細胞が働く必要性が減っていくというわけなのです(考えなくともゲームができるようになってしまうと、β波の活動が低下してしまう!)。
テレビゲームのなかには、前頭前野の脳活動を明らかに劇的に低下させるものの多いことがわかりました。
テレビゲームに熱中しすぎる子どもたちは、キレやすく、注意散漫で、創造性を養えないまま大人になってしまうかもしれません。
「そういえば物忘れが激しく、物覚えが悪く、集中できない」とお子さんに感じたことはありませんか?
注意欠陥多動障害の子どもの脳は前頭前野、帯状回前部などのニューロン活動が低下しているそうです。
脳の神経回路は二十歳過ぎでも形成されますが、ほとんどは小学校中学年くらいまでの脳の発育段階で、どのような神経回路になるかが決まってしまいます。
幼児期に組み上がった神経回路のためにゲームがやめられない、ゲーム機をみたら手が動く、ゲームがするのが本能のようになっていて、古い脳が働いてしまうのだそうです。
前頭前野には短期記憶に関係しているワーキングメモリが関与しています(作業記憶あるいは作動記憶)。記憶を短時間貯蔵して、必要に応じてさっと引き出すことのできる脳内の記憶システムといえます。
前頭前野がよく活動するときというのは、私たちが仕事をするときなど、これまでの新しい情報をどう選び組み合わせて独創性を生み出すのか、どんな手順で行動を起こすのかなどを決定する場合です。
人間は知識を新たに組み合わせて何かを創造することができなければいけません。人間は、意欲や創造性によって前向きの行動をとることができます。人間は目標を立て、理想を持ち、それに向かって前進、そして目標を達成したときに、喜びや感動を感じるものなのです。
昨今流行のパソコン教育も、やるからには子どもが受動的に知識を取り入れるのではなく、子ども自身のものとして能動的に取り入れられるようにしなければならないでしょう。
子どもの教育の根本は、子どもの創造力を養い、多くの体験をさせ、創造の喜びを体感させることにあります。
子どもは本来、全身的で発散的な遊びによって心のうさを晴らし、欲求不満を解消しています。外に出て自然のなかで遊び、五感を十分に使うことで前頭前野も含めた脳全体を活性化することが大切でしょう。
いかがでしたか?低年齢でゲーム三昧の怖さが少し伝わったでしょうか?でも一度できあがってしまった習慣(習性)を正すのには多大なエネルギーが必要なものです。お子さんのファミコン病とお父さんの生活習慣病、どちらが治しやすいのでしょうか!?
なお森先生の最近の研究では、右脳の方が顕著に活動の低下を示すそうです。次回の報告も期待しましょう。