ナラティブ・ベイスト・メディスン〜臨床における物語と対話〜

 トリシャ・グリーンハル / ブライアン・ハーウィッツ 監修

 斎藤青二 / 山本和利 / 岸本寛史 監訳

監訳者あとがきより

大規模臨床試験では、研究参加者の独特で多面的な経験は研究結果から出来上がったグラフのちりばめられた“点”の一つとしてしか表現されない。我々は数学的方法を用いてそのグラフに描かれた全体の標本についての物語を作るのである。よって臨床研究から拾い集めようとしている一般化される真実とは、標本の物語であり、研究参加者個々の物語ではないのである。
・・・大学では生身の人間を対象としない医学研究を主体としながら、片手間に医療と教育を担っているのが日本の現状である。知識のみを偏重する医師は、千差万別な患者の抱える問題には対処できない。しかしながら、彼らはそのような患者・住民を多数抱える臨床の現場を、専門化された医療の方法論のみで対処できると考えている。そのため、患者を中心とした医療を展開するための知識・技能は教えられず、それに対する情熱や興味はほとんど伝達されない。そのようにして、これまで日本の臨床医学は軽視されてきたのである。

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