『漢方概論』

 中国二千年の歴史を持つ漢方医学は、1800年前に張仲景(ちょうちゅうけい)が編纂した「傷寒論(しょうかんろん)」という本が原典となり、さらにその姉妹書である「金匱要略(きんきようりゃく)」の2つの古典から、我が国で最も広く使われている処方ができあがっています。

 さてその漢方医学の基本原理はといいますと、何と言っても一つには『陰陽理論』です。『陰陽』というのは、昼と夜、男と女、夏と冬といったように、何物にも相反する二面性があるという考え方です。概ね、上にあるもの、軽いもの、目に見えないもの、積極的なもの、強いものが『陽』であり、暗いもの、下にあるもの、重いもの、形のあるもの、消極的なもの、弱いものが『陰』だと考えます。
「生きとし生けるものはすべて固定的ではなく、すべてのことは移り変わり循環する。」そして、「陰極まれば陽になる。」また、「陽極まれば陰になる。」そう、「過ぎたるは及ばざるがごとし。」ということなのです。う〜ん、わかってくれました〜?つまりは、あまり陽に過ぎてもいけないし、あまり陰に過ぎてもいけない、ちょうどバランスのとれた状態がよいのだと考えるわけです。
 従って、「虚すれば母を補い、実すれば子を瀉(しゃ)せ。」そう、不足を補い、余分なものをださせる(発散)こと、すなわち陰陽のバランスが崩れた状態を元に戻すのが漢方なのです。
“陰陽”の基本的な考え方は、今後の食養生の話題にも関連しますので、ポイントをおさえておきましょう。 第一に色は“赤”が最も“陽”で“紫”が最も“陰”です(赤橙黄緑青藍紫といえば?)。その他、熱い方が“陽”、冷たい方が“陰”、硬いものが“陽”、軟らかいものが“陰”、重いものが“陽”、軽いものが“陰”、水分は少ないものほど“陽”、多いものほど“陰”、味は塩辛いものが“陽”、甘い・酸っぱいものが“陰”ということになります。今日の食材の“陰陽”わかります?(お子さんの方が理解が早いかもしれませんね!)

 そして二つ目の原理が、『気・血・水』の考え方です。
 『気(き)』とは生命エネルギーの循環のことで生命活動の熱源、病気を防ぐ抵抗力、代謝の根源のことです。『気』に異常が生じると、のぼせや足の冷え、動悸や頭痛などの症状として現れますが、これは気が上半身に偏る『上衝(じょうしょう)』の時にでやすい症状です。『気』の流れが滞ることを『気鬱(きうつ)』、エネルギーが不足することを『気虚(ききょ)』といいます。
 『血(けつ)』とは血液の循環のことで、身体に取り入れた栄養分を各器官に行き渡らせたり、活性化させたりする作用があります。血液の流れが滞ることを『お血』といい、生理不順、肩凝り、冷え性などの症状となって現れます。『血』の不足を『血虚(けっきょ)』といい、皮膚の乾燥、めまい、立ちくらみなどの症状が現れます。
 『水(すい)』とは血液以外の水分の流れで、体内に栄養素と潤いを与える作用のことです。『水』に変調が起こることを『水毒(すいどく)』といい、めまいやむくみとなって現れます。
 これら『気・血・水』が滞りなく循環していれば健康で、不足したり滞ったりすると病気になると考え、漢方ではこの循環を改善させる方法を考えます。

 漢方医学の基本原理その3は、『五行論』です。以前動物占いであなたは何とかグループというのが流行っておりましたが(今も流行っているのかしら?)、あれもベースは同じです(ちなみに私は「虎」で「地球グループ」)。
 『五行論』において、森羅万象は木・火・土・金・水の5つのグループに分類され、以下のような特徴をもっています。

<木グループ>怒りすぎたり驚きすぎると、肝(肝臓・胆嚢・目・精神活動・血液調整)を痛める。風(風邪)に弱い。肩凝り・眼病・筋肉痛・高血圧・不眠症・生理不順・頭痛に注意!

<火グループ>喜びすぎると、心(心臓・循環器・小腸・舌・神経系)を痛める。夏の暑さに弱い。動悸・息切れ・血液循環障害・不整脈・狭心症に注意!

<土グループ>考えすぎ、心配のしすぎは、脾(胃・口・消化器官・代謝機能)を痛める。湿気に弱い。食欲不振・胃腸障害・貧血・めまい・糖尿病・低血圧などに注意!

<金グループ>悲しみすぎ、鬱うつすると、肺(肺・呼吸器・鼻・大腸・皮膚)を痛める。乾燥に弱い。気管支炎・鼻炎・皮膚病・糖尿病・喘息に注意!

<水グループ>怖れると、腎(腎臓・膀胱・耳・生殖器)を痛める。寒気に弱い。神経痛・耳鳴り・難聴・頭痛・子宮疾患・前立腺肥大・肩凝りに注意!

 いかがですか。現在あなたがお困りの症状はどのグループでしたか?そうすると、その原因は・・・だから、気をつけなければならないのは・・・、となるわけです。 どうです、面白いでしょう。えっ、“日”と“月”がなかったって?鋭い!実は“日”は“陽”を、“月”は“陰”を表しているのでした。これで“1週間”が勢揃い。

五行論

五味
五色
五化
五気
五行
五臓
五腑
五官
五声
形体
情志
小腸
湿
大腸
皮毛
膀胱

*宇宙にある全てのものは5つのグループに分類され、横列は連関します。

 『五行論』では、さらに“相生”“相剋”という関係があります。“相生”とは「木をすり合わせると火ができ、燃えつきると土となり、土中に鉱物を生じ、岩の間から水が湧き出し、水は木を養う。」また、“相剋”とは「木は土から養分を吸い上げ、土は水を奪い、水は火を消し、火は鉱物を溶かし、鉱物は木を傷つける。」という関係です。“正五角形”を作ってみると、それぞれの関係がよくわかると思います。
 さあ、『陰陽理論』、『気血水』、そして『五行論』を手に入れた皆さん、今日からの健康管理に活かしてみませんか!

 最後に「体が健康に戻れば、病気は治る。」これは覚えておきましょう!

<追記>
 それから漢方で大事なのは、同じ症状を訴えていても、胃腸の弱い人もいれば丈夫な人もいる。太っている人(実証)、やせている人(虚証)、暑がりの人(熱証)、寒がりの人(寒証)、いろんな患者さんがいるということです。西洋医学では同じ薬となりますが、漢方では患者さんのタイプや診察所見を勘案しながら、処方が決まります(同病異治)
 そうすると、頭痛が軽快するとともに、胃腸の具合もよくなり、冷え性も改善する、ということも期待されるのです(異病同治)。消炎鎮痛薬に胃薬を飲んでいるあなた!考えてみませんか?
 ただし、自分に合ったものでも安易に人にすすめるのは禁物です!十人十色、千差万別なのですから。
 そして服用期間ですが、2週間、長くとも4週間同じ漢方薬を服用しても、ご利益がなさそうなら、おそらくその後も効かないと考えます。漫然と服用していても、効かないものは効きません!さっさと薬の見直しを検討するのがよろしいでしょう。

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