クリニック通信2004年12月号 〜

《年末年始の休診予定について》
 12月29日(水)〜1月3日(月)

《横浜市基本健康診査について》
 横浜市基本健康診査料金は現在のところ無料(ただし65歳未満は心電図¥500)ですが、いよいよ来年1月から40歳から64歳までの方は有料化(一律¥1,200)されます(65歳以上はこれまでどおり無料です)。

《インフルエンザについて》
 インフルエンザはインフルエンザウイルスによる感染症で、鼻咽頭、のど、気管支などを標的臓器とします。インフルエンザは、罹患している人の咳、くしゃみ、つばなどの飛沫と共に放出されたウイルスを、鼻腔や気管など気道に吸入することによって感染します。急に発症する38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛などに加えて、咽頭痛、鼻汁、咳などの症状も見られます。潜伏期は1日から5日(平均3日間)とされています。大多数の人では特に治療を行なわなくても1〜2週間で自然治癒します。しかしながら、乳幼児、高齢者、基礎疾患をもつ人では、気管支炎、肺炎などを併発したり基礎疾患の悪化を招いたりして、最悪の場合死に至ることもあります。
 抵抗力の弱い高齢者・乳幼児、気管支喘息等の呼吸器疾患、慢性心不全等の循環器疾患、糖尿病、腎不全、免疫不全(免疫抑制剤による免疫低下も含む)などの方は、インフルエンザにかかると合併症を併発する場合があります。高齢者では細菌の二次感染による肺炎、気管支炎、慢性気管支炎の増悪が起こりえます。また、乳幼児では中耳炎や熱性けいれんが起こりえます。その他の合併症としては、ウイルスそのものによる肺炎や気管支炎、心筋炎、アスピリンとの関連が指摘されているライ症候群などが挙げられます。合併症の状況によっては入院を要したり、死亡する例もあり注意を要します。近年我が国では、小児において年間100〜200例の、インフルエンザに関連したと考えられる急性脳症の存在が明らかとなり、現在病態の解明が進められています。
 抗原性の違う2種類のA型インフルエンザとB型インフルエンザのウイルスが、同じシーズンの中で複数流行することが多いので、A型インフルエンザにかかったあとB型インフルエンザにかかったりすることがおこります。
 インフルエンザワクチンの接種を行うことで、インフルエンザによる重篤な合併症や死亡を予防し、健康被害を最小限にとどめることが期待できます。
 インフルエンザの流行株は毎年変化しますし、ワクチン接種による重症化の予防に有効な免疫レベルの持続期間はおよそ5ヵ月となっていますので、毎年シーズン前にワクチン接種を受けることが必要です。
 一般的に副反応は軽微で、10〜20%で接種局所の発赤、腫脹、疼痛をきたすことがありますが2〜3日で消失します。全身性の反応としては、5〜10%で発熱、頭痛、悪寒、倦怠感などみられますが、通常は軽微で、やはり2〜3日で消失します。また、ワクチンに対するアレルギー反応として、まれに湿疹、じんましん、発赤と掻痒感などが数日見られることもあります。
 空気が乾燥すると、インフルエンザに罹患しやすくなります。乾燥により咽頭粘膜のウイルス粒子に対する、物理的な防御機能が低下します。外出時にはマスクを利用したり、室内では加湿器などを使ったりして適度な湿度(50〜60%)を保ちましょう。常日ごろからバランスよく栄養をとることも大切です。外出時のマスクの利用や帰宅時のうがい、手洗いは、かぜの予防と併せておすすめします。

《高血圧治療の新ガイドラインについて》
 今年10月、『新しい高血圧治療ガイドライン』が発表されました。降圧目標値は以下のとおりです。
  65歳以上:  140/90未満
  65歳未満:  130/85未満
  糖尿病・腎臓病:130/80未満
 なお、下記に示す“心血管病の危険因子”がある場合には、早めに治療を開始する必要があります。
  喫煙
  高コレステロール血症
  糖尿病
  *低HDLコレステロール血症
  高齢(男性60歳以上、女性65歳以上)
  若年発症の心血管病の家族歴
  *肥満(特に内臓肥満;ウェスト男性85cm以上、女性90cm以上)
  *尿中微量アルブミン
   (*は今回新たに追加となった項目です。)

 健康診断等で高血圧を指摘された場合、塩分制限や過食・夜遅い食事・早食いの改善、適度な運動、生活リズムの改善などに取り組んでください。3ヶ月経っても血圧が高い場合は降圧薬の適用となります(危険因子の数や合併症によっては、より早急な治療が必要となります)。

《鉄欠乏性貧血》
 健康な成人の体内には鉄が3000〜4000mg存在します。このうちの約65%は血液中のヘモグロビンに含まれます。その他の30%の鉄分は肝臓や脾臓、骨髄などに貯蔵されています。通常、私たちがとる1日の食事に含まれる鉄の量は約10mgで、そのうちの約10%(1mg程度)が体内に吸収されます。一方、腸の粘膜が新陳代謝ではがれ落ちることなどによって、1日1mg程度が体外に排出されます。このように健康な状態では体内の鉄の出納はいつも平衡状態にあります。
 また、出血したり、食事から十分に供給されずに鉄分の出納がマイナスになっても、肝臓などにある貯蔵鉄が血中に動員されるためすぐには貧血は生じません。ただし、このような鉄分の出納のマイナス状態が長期間続くと、貯蔵鉄が枯渇し、そこではじめて鉄欠乏性貧血を生じることになります。
 鉄欠乏になる原因を大別すると、食事などからの摂取不足、成長期における需要の増大、出血や生理などによる過剰な喪失、消化器の病変などによる吸収不全などがあります。女性は月経などの生理的出血の機会が多いため、若い女性に鉄欠乏性貧血が多いのは当然といえます。
 一方、男性や閉経後の女性に鉄欠乏性貧血が生じた場合、からだのどこかに出血をきたす病変が存在すると考えて間違いありません。その多くは消化管に由来するもので、胃・十二指腸潰瘍、大腸がん、痔などが高頻度に見られます。
 貧血による一般的な症状としては動悸・息切れ・疲れやすい・頭痛などがあります。また鉄欠乏性貧血に特徴的な症状として、爪がもろくなり、そり返って、中心がくぼんだスプーン状になることがあり、これを匙状爪(さそうじょう)と呼びます。このほか、口のまわりや舌が荒れたり(口角炎・舌炎)、食道の粘膜が萎縮することによる嚥下困難を生じることもあります。
 鉄欠乏性貧血は徐々に進行することが多いため、からだのほうが貧血状態に適応してしまい、貧血が進んでいるのに自覚症状に乏しいか、まったく欠けている場合すらあります。そのため、健診など採血の機会にたまたま発見されることも数多くあります。
 血液検査による鉄欠乏性貧血の特徴は、ヘモグロビン内の鉄が欠乏し赤血球中に含まれるヘモグロビン量が減少するため、貧血が進行するにつれ赤血球一個一個の大きさが小さくなっていきます(小球性低色素性貧血)。このほか、血清中に含まれる鉄分(血清鉄)の低下、貯蔵鉄を反映するフェリチンという鉄結合たんぱく質の低下、不飽和鉄結合能(血液中で鉄と結合するべきたんぱく質のうちで鉄と結合していない状態のもの)の上昇などが認められれば鉄欠乏性貧血の診断は確実となります。
 鉄の補充は鉄分を多く含む食品を心がけて摂取することも決して悪いことではありませんが、その効果には限界があります。たとえば、鉄を高率に含んでいる乾燥ひじきで約180g、レバーでは約770gを食べてようやく鉄100g、すなわち鉄剤にして1〜2錠に相当することになります。すでに明らかな鉄欠乏性貧血に陥っている場合は、くすりの形で鉄分を補充するほうがはるかに現実的です。
 通常、鉄として1日100mg、すなわち鉄剤1〜2錠を内服します。このペースで鉄分の補充を行うと、およそ1〜2か月でヘモグロビンは正常化します。この時点ではまだ貯蔵鉄はほとんどない状態ですので、さらに2〜3か月鉄剤を継続して服用する必要があります。
 
鉄剤の副作用としては、ときに軽い腹痛、食欲低下、便秘あるいは軟便を生じることがあります。症状が強い場合には、小児用に作られているシロップ状の鉄剤(インクレミンシロップ)にすると緩和されることもあります。また、1回の投与量を減らしたり、1日おきの服用によっても人により症状が緩和されます。
 なお、鉄剤服用中は便が真っ黒になることを知っておいてください。また、鉄剤内服中にはお茶はいっさい飲めないと勘違いしている方も見受けられますが、実際には内服前後の1時間避けていただければ十分ですビタミンC(シナール)によって鉄吸収が促進されるため、これを併用するのもよいでしょう。
 注射剤(ブルタール)で鉄を投与する方法もありますが、鉄の過量投与は肝硬変、糖尿病、心筋障害、脳下垂体不全などの重大な臓器障害を引きおこす恐れがあります。そのため、注射剤は消化器症状が強くてどうしても内服できない場合にかぎられます。

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